祭壇のぶどうの木(新座チャペル)

チャペルの豆知識

2016/01/01

キリスト教とチャペル

OVERVIEW

チャペルにまつわる豆知識をご紹介します。

立教学院聖パウロ礼拝堂の一番奥には祭壇があり、両側は丸い柱で支えられていますが、この柱に金色の飾りが取り付けられています。祭壇の下部なので気づかない方が多いかもしれません。是非チャペルの前部からご覧いただければと思います。この金の飾りは、よく見ると葉や実がついていて、ぶどうの木を表しているのがわかります。

聖書の世界でよく栽培されていた植物は、オリーブ、イチジク、そしてぶどうでした。気候が栽培に適しており、特にぶどうはぶどう酒を醸造するために盛んに栽培されていたのです。そのためぶどうの木はユダヤ人にとって身近な存在であり、カナの婚礼で水がぶどう酒に変わった話や、古い皮袋には古いぶどう酒を、新しい皮袋には新しいぶどう酒をと、新約の教えをたとえた話、ぶどう園の主人のたとえ話、そしてイエス・キリスト自身も「わたしはぶどうの木、あなたがたはその枝である」と言い、イエス・キリストをぶどうの木に例えると人間は実を結ぶ枝に例えられると語っています。

ぶどうの木の話が聖書に多く出てくるのは、単にユダヤ人に身近だったからではなく、その性質が神の国を表すのに適していたからでした。

第一に、ぶどうはとても長い根を持っていて、地上に出ている部分に対して5倍の長さを持つ根があると言われています。長い根を使って忍耐強く水分や栄養分を取り入れ、よい実を結ぼうとする植物なのです。

第二に、ぶどうはとても手間のかかる植物です。放置しておいてもぶどうは実を結びますが、よい実を結ぶためには枝の精査が必要でした。よい実を結ぶ枝、結ばない枝を、まだ実を結ぶ前に判別してよい実を結ぶ枝だけ残し、剪定するのが不可欠でした。
第三に、ぶどうの木は曲がりくねっている上に柔らかく、枯れた後や切り倒した後に再利用が出来ません。ぶどうの実を結ぶためだけに存在している植物なのです。

こうした特徴が、神の国に迎え入れられる者と迎え入れられない者が判断される、最後の審判を例えるのに用いられたわけです。すなわち、神は農夫にたとえられ、枝の判別と剪定こそが、最後の審判を表しているのです。

ぶどうの木が、祭壇を支える柱に飾り付けられているのは、立教で学ぶ者がぶどうの木のように、長い根をもって忍耐強く学校生活を過ごし、よい実を結ぶ人間となることを目指して、再び訪れることのない、今この時を精一杯生きることを語り伝えているのです。すなわち、立教で学ぶ者の土台として、ぶどうの木の精神が置かれているのです。

土台は見えにくい上に気づきにくく、私たちは忘れがちになるかもしれません。しかし、土台は建物をささえる重要な要です。私たちの学校生活を支える要として、ぶどうの木の教えが祭壇の支柱を通して語られているのを、新座のチャペルを訪れる多くの皆様に知っていただき、学校生活に生かしていただければと願います。

立教新座中学校・高等学校チャプレン 鈴木 伸明


〔『チャペルニュース』第586号 2016年1月号/連載「チャペルのタカラモノご紹介します!」より〕

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