2015/03/11 (WED)

「風化」に抗して — 4年目の3.11に —

キーワード:その他

OBJECTIVE.

東日本大震災とそれに続く東京電力福島第一原子力発電所事故から4年の月日が経とうとしています。犠牲になられた方々、その後の困難の中で亡くなられた方々に心から哀悼の意を表します。

津波の被災地では堤防の建設や土地のかさ上げ、居住地の高台への移転など、復興のための作業が続けられています。それでもなお、被災地全域で24万人弱の人々が避難生活の継続を強いられています(復興庁『復興の現状』2014年11月13日)。福島第一原発においては、現場の努力によって当初の危機的状況は回避されているものの、汚染水の流出をはじめ数々の困難が続いており、廃炉への行程も困難を極めています。4年という時間が経過するなかで、「風化」という言葉をよく耳にするようになりました。確かに日々のニュースから被災に関する報道は減り、原子力災害の現状についての情報も限られているように見えます。しかし人間の歴史的世界においては自然現象として風化が進むわけではありません。風化という言葉をあたかも自然の成り行きであるかのように用いるとその時、出来事自体を「なかったこと」にしようとする力学が見えなくなってしまいます。そうであってはならない。東日本大震災は私たちの共通の経験であり、原発事故は現に進行中のことがらです。それが消し去ることのできないものであることを、私たちは誰もが知っているのではないでしょうか。4年という時間が経過するなかで、「風化」という言葉をよく耳にするようになりました。確かに日々のニュースから被災に関する報道は減り、原子力災害の現状についての情報も限られているように見えます。しかし人間の歴史的世界においては自然現象として風化が進むわけではありません。風化という言葉をあたかも自然の成り行きであるかのように用いるとその時、出来事自体を「なかったこと」にしようとする力学が見えなくなってしまいます。そうであってはならない。東日本大震災は私たちの共通の経験であり、原発事故は現に進行中のことがらです。それが消し去ることのできないものであることを、私たちは誰もが知っているのではないでしょうか。

大学にとって4年という期間は、入学した新入生が学士課程を修了し、卒業して社会へと出立していく時間に相当します。この春大学を卒業していく学生たちの多くは2011年春、高校の卒業式、大学の入学式を経験することなく学生生活を始めました。その中には被災地の学生も含まれています。復興支援に関わった学生はもとより、そうでない学生たちも自分たちの大学生活4年間が東日本大震災の春に始まったことを心に深く刻み付けています。そして大学でのさまざまな学びを通して、一人ひとりが自分なりに考え3.11以後の世界への関わりを模索しているのです。

東日本大震災と福島第一原発事故は、私たちが現在生きているこの世界の根幹部分をむき出しにしました。知性の府としての大学はこの世界のありようを目を見開いて見、問い続けていかなければなりません。被災によって時代の負荷を一身に負っている人々と共にあるという自覚をもって、私たちは日々の教育と研究を進めていきます。

2015年3月11日
立教大学総長 吉岡知哉

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