“次世代を担うリーダー”の在り方を学び、考えた一日
——立教大学×北海道札幌西高等学校

立教大学特別授業

2024/03/01

研究活動と教授陣

OVERVIEW

2023年11月8日、北海道札幌西高等学校で立教大学による特別授業が開催されました。
多様性と組織におけるリーダーシップの研究を行う石川淳統括副総長が「グローバル・リーダーシップ・プログラム(立教GLP)」を基に講義を実施。不確実性の高まる現代社会に必要とされるリーダーの在り方をテーマに講義を展開し、生徒950人が「リーダーシップ」について学びを深めました。

新しいリーダーシップの形について語る石川統括副総長

立教大学統括副総長
経営学部 教授
石川 淳

経営学部長、キャリアセンター部長などを歴任。
2021年より現職。

研究分野
人文・社会/経営学
研究テーマ
リーダーシップ論・組織行動論・人材マネジメント論

全員が主役のリーダーシップ「シェアド・リーダーシップ」のススメ

現代社会に求められる「シェアド・リーダーシップ」とは

私は、組織行動論やリーダーシップ論、人的資源管理論をメインとした研究を行っています。立教大学では、独自のリーダーシップ開発プログラム「グローバル・リーダーシップ・プログラム(立教GLP)」を立ち上げ、グローバルに活躍すべく「リーダーシップ」をスキルとして身に付けるための教育に力を入れています。これは全学部生が履習できる全学共通のプログラムです。

生徒とコミュニケーションを取りながら特別授業を展開

今回の講義のテーマである「シェアド・リーダーシップ」とは「リーダーとメンバーの概念定義が流動的で、必要な際に必要なメンバーがリーダーシップを発揮していく、といったグループ状態およびそのグループでのリーダーシップ」のこと。職場やチームの共通のゴールに向けて、全員がお互いにリーダーシップを発揮し合うことを指します。

リーダーシップというと、「大衆の上に立つ偉い人」のようなイメージがあると思います。しかし時代の変遷によって、求められるリーダーシップは変化します。環境の複雑さや物事の不確実さが存在する「VUCA(ブーカ)の時代」と呼ばれる現代は、過去の成功体験が通用しにくい時代。組織に一人のリーダーを置くといった従来のリーダーシップ構造では、適切なビジョンが示せず、判断を誤るリスクも高いため、課題解決が困難になりやすいといわれています。そんな現代社会に求められるリーダーシップは「目標を達成するために他のメンバーに及ぼす影響力」と定義されています。将来の予測が困難な時代だからこそ、一人一人が課題に対して自分なりのリーダーシップを発揮していく必要があるのです。

一人のリーダーを立てず課題の解決を議論する方法の一つとして「ワイガヤ」があります。年齢や立場に関係なくワイワイガヤガヤ意見を出し合うことで、新たな発見や解決の糸口を見つけることができ、チームの生産性を向上させるといわれています。経営学的に見てもVUCAの時代で生き残っているのは、組織全体で試行錯誤しながら成長している企業でしょう。誰しもが課題に対してリーダーシップを発揮し行動していく「シェアド・リーダーシップ」の形こそ現代に求められているのです。

リーダーシップを発揮するための二つの意識と行動

私は「リーダシップは誰しもが発揮できるものであり、すべきもの」と考えます。発揮するためには二つの意識が大切です。一つ目は「自らの強みを生かしたリーダーシップをとる」こと。自分には強みがないためリーダーに向いていないと思う必要はなく、例えば、短所だと決めつけていた“頑固さ”の裏側には、“粘り強さ”というポジティブな面があるように、全ては裏腹です。粘り強い姿勢に周囲の人が影響され、物事が再び動き始めたら、それも強みを生かしたリーダーシップを発揮したことになります。

会場の様子。全校生徒約950人が参加

もう一つは「視座を高める」こと。物事を客観的かつ広い視野で見ることができる状態を指します。例えばサッカーだったら、目の前にいる相手選手に立ち向かうだけではゴールを目指すことができません。プロ選手のように、フィールド全体にまで視野を広げた行動で相手にボールをつなげていかなければ、シュートはなかなか決められません。このように周囲全体を意識することで、より多角的な視点で物事を判断でき、適切なリーダーシップを発揮することができます。
しかし、リーダーシップは「意識」するだけでは誰もが発揮できるものではありません。それに伴った「練習または学習」が必要になります。知識として吸収するだけでなく、実践的な行動に移すことが大切であり、その「経験」から学びを得ることがリーダーシップを発揮させるために重要なのです。

社会に生かすために必要な「経験の振り返り」

経験から学習するには「リーダーシップ目標」を立て、経験し、振り返ることが大切です。リーダーシップ目標とは、自らの行動に対し意識やビジョンを明確にすること。自分らしいリーダーシップを発揮するには、自己認識ができているかどうかが問われます。例えばチームのために一人で頑張り続けたことが、逆に周囲のモチベーションを下げてしまうことがあります。この自己認識と他者認識の食い違いを防ぐためにも「フィードバック」が重要です。

熱心にメモをとる札幌西高校の生徒

フィードバックとは、相手の行動に対して改善点や評価を伝え、軌道修正を促すこと。最近は企業で多く取り入れられており、社員の目標達成に必要な問題解決や成長促進を目的として実施されています。フィードバックは、自己認識を高め新しい意識を広げてくれるため、自分の強みや弱みを発見するのに効果的です。現代社会に求められているのは、自分らしいリーダーシップを発揮できチームで活躍できる人。皆さんにも経験から学んだことを実践し、自らの強みを社会へ生かしていただきたいと思います。

今日の講義では「シェアド・リーダーシップ」についてお話しさせていただきました。カリスマ型リーダーシップが主流だった以前と比べ、リーダーシップの在り方は変化しています。私自身、自らの利益を優先するのではなく、立教大学全体、学生や教職員の利益を一番に尽くしていきたいと思います。次世代を担う皆さんには、ぜひこの新しいリーダーシップを身に付け、発揮してほしいですね。

特別授業を体験して

1年生

リーダーシップというと漠然と「カリスマ」という単語が連想され、生まれ持った才能が影響するものだと思っていましたが、他者に良い影響を与えることがリーダーシップだと知り、自分のリーダーシップの在り方について考える機会になりました。

1年生

シェアド・リーダーシップの考え方を高校生活のみならず、大学生や社会人となってからも用いていけるよう、今から意識し行動していきたいと思います。大学の先生が直接お話をしてくださる機会は少ないので、この貴重な学びを自分の糧としていきたいです。

2年生

今回の講義を聴き、全員がリーダーシップを発揮した、一人にとらわれないリーダーの形を知りました。私は札幌で高校生同士の横の繋がりを広める、高校生団体のようなものを組織し取り組んでいます。石川先生の本も読んで活動に生かしていきたいです。

2年生

私は友人から、部活に関する相談を受けて、度々話を聞いていましたが、今回の講義でそれも、シェアド・リーダーシップだったと気付きました。リーダーシップを持つという意識に少しハードルが下がり、自分にも発揮できることなんだと認識できました。

3年生

石川先生へ質問した際に、「リーダーは、みんなについてきてもらうとは違うけど」という私の発言に対し、「みんなを巻き込むってことだよね」と言ってくださったことがすごく腑に落ちました。リーダーの影響力や在り方を深く学ぶことができた良い機会でした。

3年生

講義を学び、自分が今いる空間が心地よい場所であるように、自分にできることをするということもリーダーシップだと思うと、私が活躍できる場面はまだまだたくさんあると感じました。全体を思いやった発言や行動ができるよう、経験を積んでいきたいです。

※本記事は『北海道新聞』(2023年12月9日掲載)をもとに再構成したものです。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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