ウィズコロナ時代における就職活動・働き方

経営学部経営学科 中原 淳教授

2021/06/14

研究活動と教授陣

OVERVIEW

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、就職活動や働き方に大きな変化をもたらしました。オンライン化が進む中で見えてきた課題や可能性、求められるスキルなどについて、人材開発・組織開発を専門とする経営学部の中原淳教授に伺いました。

オンライン化による影響と課題

人材開発や人事に関する研究に20年ほど携わってきましたが、就職活動や働き方は、コロナ禍によって「20年分の変化」を一気に迎えた感覚があります。

2020年度の就職活動では対面の機会が激減し、最終面接まで全てオンラインで行ったケースもあるようです。私のゼミに所属する学生が行った調査(図1参照)では、オンライン面接の場合、「その職場で働くイメージを描きづらい」といった傾向が見られました。オンライン面接で入社した人がリアリティーショック(理想と現実とのギャップに衝撃を受けること)に襲われる可能性があり、その点を解消することが就活生と企業・団体の共通課題といえそうです。

働き方ではリモートワークが普及し、出張を伴う商談も多くがオンラインで代替できるなど、より効率的に働けることが分かりました。他方、一緒に働く者の空間が異なることで、従業員のエンゲージメント(組織への貢献意欲)が低下するケースや、業務が円滑に進まないチームが顕在化しました。

図1:柴井伶太・佐藤智文・中原淳(2020)「立教大学経営学部 中原淳研究室 オンライン面接の実態に関する調査報告書」より

※レポートはWebサイトにて公開中です。

求められるITスキルと言語能力

中原ゼミの学生が開催したオンラインイベントの様子

こうした状況で就活生や労働者に求められる力とは何か。まず「ITスキル」です。これはスキューバダイビングでいうとボンベのようなもので、まさに「生命線」。とはいっても高度な専門技術が必要とされるわけではなく、「Zoom」などのWeb会議ツールを使いこなすことができれば十分だと考えます。

並んで大切なのが「言葉で伝える力」。オンラインは「察する文化」がほぼ通じない世界で、より高い言語能力が求められます。特に管理職やリーダーがチームを動かすためには「目標を掲げてメンバーに理解させ、まとめあげていくこと」と「日々の声掛け」が重要です。これはビフォーコロナの時代から大切なスキルで、より手が抜けない環境になったといえるでしょう。

オンラインでは難しいことの一つに「新規のコミュニティ形成」が挙げられます。オンラインのみでは人間関係を築くのに非常に時間がかかるため、対面と組み合わせて「共に何かを成し遂げる経験」をすることが必要だと感じます。

悲劇的な出来事の後には成長がある

コロナ禍による変化は、組織が持つレジリエンス(逆境に対する回復力や柔軟性)の有無を浮き彫りにしました。コロナ禍が収束した後、ビフォーコロナ時代の姿に逆戻りする組織と、これを糧に進化を遂げる組織に二極化することが予想されます。就職活動の際にどちらを選ぶのか、働き手にとって選択の大きな基準となることでしょう。

「ポスト・トラウマティック・グロース」という概念があります。「悲劇的な出来事の後には成長がある」という意味ですが、組織や人にとって、ここがまさに成長の機会だと考えます。学生においても、これを機にITスキルを磨いたり、オンラインイベントに積極的に参加してみたりと、新たなことに挑戦してほしいと願っています。

中原教授の3つの視点

  1. オンライン化によりITスキルと言語能力が特に重要となる
  2. コロナ禍による変化は組織の柔軟性の有無を浮き彫りにした
  3. 困難な状況をさらなる成長の機会に


プロフィール

PROFILE

中原 淳

東京大学教育学部卒業、大阪大学大学院人間科学研究科修了。博士(人間科学)。マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授等を経て、2018年より現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る

研究活動と教授陣

2024/03/11

人や社会を変えるアートの力

社会学部 小泉 元宏教授

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。